二章 真実の口

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 がくっと落ちる腰を支えるよう差し込まれた膝に、びくんと背中が震える。 「……らめ、まっへ、んぅ」  ビーシュの懇願が聞こえていないわけでもないだろうに、レオンハルトは何も言わない。  温和な物腰を裏切るような激しさに、ビーシュは何一つ抵抗できずに唇をむさぼられる。 「んうっ、れ、レオンくん?」  口の中に溜まる唾液が自分のものなのか、それともレオンハルトのものなのか。わからなくなるほどにぐちゃぐちゃに掻き回されたものを、嚥下する。  じわっと、腹が熱くなった。密着した下肢は、どうしようもない衝動を感じて痛いほどにじれている。 「ごめんね。あまりにもビーシュがかわいくて、我慢できなかった」  口の端から、飲みきれずに零れた唾液を人差し指でぬぐい、レオンハルトは先ほどと何ら変わらないすがすがしい表情で悪びれる様子もなく笑った。  男、しかも一回りほど年を取った相手に、ねっとりとしたキスを落としたとはとても思えない顔だ。 「かわ……かわいい? ぼく、が?」  言われ慣れていない単語に、ビーシュは目を白黒させる。  小さい頃ですら、かわいいなんて言われたことはない。大きくなってからは、むしろむさ苦しいとさえ言われていた。 「うん。かわいいよ」  嬉しがって良いのか、怒って良いのか。     
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