二章 真実の口

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 あまりの恥ずかしさに耐えきれず、今すぐ消えてなくなりたい衝動に駆られるも、しっかりと抱きすくめられていては身動きすらままならない。 「ビーシュは、嫌だったかな?」  抵抗できないのを良いことに、レオンハルトは白衣の襟をめくって顔を埋めてきた。首筋の、柔らかい皮膚を思いっきり吸われ、ビーシュは目が眩むほどの快感を覚え、声を漏らした。 「嫌じゃなさそうだね」 「駄目だよ、レオンくん。駄目だよ」  嫌なわけがない。  相手を選ぶ余裕がないほど、体は男に飢えている。なけなしの矜持で、理性的なふりをしているだけに過ぎない。 「駄目なの? どうして? ここが、職場だからかな? それとも、僕だから?」  ビーシュはぎゅっと目を閉じて、首を横に振った。  どれも違う。  どれも、ビーシュにとっては、なんら問題ではない。  職場でしたことなんて、幾度もある。  レオンハルトには特別な好意を抱いている。嫌いな相手ではない。  駄目なのは、自分だ。  この目に抱かれたら、きっと年甲斐もなくおぼれてしまうだろう。  遊びとして割り切れるかどうか、わからない。悲しい思いをするとわかっていて手を出せるほど、もう若くない。 「……おかね」  ようやっとの体で絞り出した声に、レオンハルトは首をかしげた。 「お金が欲しいの?」  違う。ビーシュは首を振る。     
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