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あまりの恥ずかしさに耐えきれず、今すぐ消えてなくなりたい衝動に駆られるも、しっかりと抱きすくめられていては身動きすらままならない。
「ビーシュは、嫌だったかな?」
抵抗できないのを良いことに、レオンハルトは白衣の襟をめくって顔を埋めてきた。首筋の、柔らかい皮膚を思いっきり吸われ、ビーシュは目が眩むほどの快感を覚え、声を漏らした。
「嫌じゃなさそうだね」
「駄目だよ、レオンくん。駄目だよ」
嫌なわけがない。
相手を選ぶ余裕がないほど、体は男に飢えている。なけなしの矜持で、理性的なふりをしているだけに過ぎない。
「駄目なの? どうして? ここが、職場だからかな? それとも、僕だから?」
ビーシュはぎゅっと目を閉じて、首を横に振った。
どれも違う。
どれも、ビーシュにとっては、なんら問題ではない。
職場でしたことなんて、幾度もある。
レオンハルトには特別な好意を抱いている。嫌いな相手ではない。
駄目なのは、自分だ。
この目に抱かれたら、きっと年甲斐もなくおぼれてしまうだろう。
遊びとして割り切れるかどうか、わからない。悲しい思いをするとわかっていて手を出せるほど、もう若くない。
「……おかね」
ようやっとの体で絞り出した声に、レオンハルトは首をかしげた。
「お金が欲しいの?」
違う。ビーシュは首を振る。
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