二章 真実の口

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「ぼく、いまはお金をもってないから。駄目」  レオンハルトはまぶたを瞬いて、初めて驚いた顔を見せた。 「いらないよ」  ビーシュは「それじゃあ、駄目」と首を振る。下肢を快感に腫らしている状態で、何を言っているのだろうと自分でも思うが、すぐには譲れない。 「お金を間に挟まないと、ビーシュは安心できないの?」  こくん、と頷く。  熟れた体のすぼまりをじりじりと刺激している太ももの動きにびくびくと震えながら、ビーシュは熱くくぐもった吐息を零す。 「怖いのかな?」 「んっ……ふぁっ」  こくこくと、小刻みに頷き返す。  与えられる快感から逃げようとつま先立ちになるが、すぐに追いかけてきた足に強くこすられ、さらに強い刺激を覚えたビーシュは、背中を大きくのけぞらせ、喘いだ。 「す、好きに、なっちゃうからっ……んっ」  サファイアブルーの瞳に覗き込まれながら、深く舌を埋められる。  体の奥に入ってくる他人の暖かさに、どうしても抵抗できない。心ではなく、体が無条件で受け入れてしまっていた。 「好きになってくれても、いいんだよ」  ちゅく、ちゅくと子供をあやすように優しく唇を啄むレオンハルトに、ビーシュは目尻からぽろりと涙をこぼした。     
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