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ビーシュはぞくぞくと背中に走る快感をやり過ごそうと、ぎゅっと、目をつぶった。
「ぼくは、初めてじゃないから」
「そう? なら、大丈夫かな?」
面白そうに笑ったレオンハルトに、ビーシュは顔を赤くした。
恥ずかしい。
恥ずかしくて、死んでしまいそうだ。
何を言っているのだろう。
もう、なにがしたいのかどうすればいいのか、さっぱりわからない。
「い、いや、そうじゃなくて」
白衣を脱がされ、シャツのボタンをひとつひとつ外されてゆく。
レオンハルトの指は、軍人にしてはあまりごつくなく、長くて綺麗だ。剣を振るうよりも、楽器を叩いている方がよほど似合うだろう。
「僕と寝るのは嫌かい?」
嫌だと言えば、レオンハルトはあっさりと離れてゆくだろう。
本心を言うならば、このまま抱いて欲しい。体はもう、レオンハルトの雄を想像して出来上がっていた。
とはいえ、このまま進んではいけないと、なけなしの理性が迷わせていた。
レオンハルトは、エヴァンや夜の店にたむろする男たちとは違う。まして、貴族だ。
詳しくはわからないが、オスカーという名には聞き覚えがある。名のある貴族に違いない。
男遊びに興じて良い身分ではないだろう。
「嫌なの? ビーシュ」
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