二章 真実の口

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 シャツの隙間から差し込まれた手が、戸惑いなく胸をさすってくる。ビーシュが拒否できないのを知っているように、手の動きは大胆で、淫らだ。 「ひんっ、れお、く……んっ」  綺麗に切りそろえられている爪が、胸の粒をかりっとはじく。女の胸をまさぐるように薄い胸を愛撫される。  びくびくと震えながら浮き上がるビーシュの腰に、レオンハルトの目の色が濃くなる。 「嫌じゃ、ないんでしょ?」  ビーシュは目尻に溜まった涙をこぼし、こくこくと頷いた。 「やじゃない……けど、駄目だよ……ぉ」  年代物のベッドは、レオンハルトが動くたびにぎしぎしと悲鳴を上げて、ここが、いつもの職場であるのだと教えている。  相手は夜の街で買った男でも、宝石のために取引をした男でもない。  本来ならば会うこともなく、すれ違いすらしなかっただろう相手だ。  今ならば、なかったことにできる。  度の過ぎた悪戯として、片付けてしまえる。 「駄目じゃないって、ビーシュのここは言っているよ」  股間を服の上から撫でられ、嬌声があがる。 「んあっ、れおくん。ほんとに……する、の?」  膝を割られ、下履きを下着ごと取り払われてしまった。  男に組み拉かれ、全裸にされる背徳感に、ビーシュは頬を染めて感じていた。 「したいな」  ちゅく、っと唇が重なる。  触れるだけのキス。     
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