二章 真実の口

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「挨拶?」  いぶかしむニルフは、男が指さし出してきた革張りの箱を見て、ランプを手から滑り落としそうになる。 「こちらの品は、我らが手にするはずだったもの。お返し願いますよ」  男は馬鹿丁寧にお辞儀をし、マントを翻し闇に消えた。 「まて、かえせ!」  すぐさま追いかけるが、血相を変えて階段を駆け上がってきたニルフに驚く警備員がいるだけで、仮面の男の形跡はまったく、どこにもない。 「どうしたんだ、ニルフ。こんな夜更けに騒いで」 「父さん、ティアラが。ねえさんのティアラが、盗み出されました!」  しんと寝静まったアーカム邸が、ニルフの一言でにわかに騒がしくなった。
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