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第十一章
「ザーク、一人で行くなんて言うな」
どこか懇願ともとれるリグの声。
けれど、ザークは首を縦には振らなかった。駄目だというように、横に振って。
「一人で行きます。リグがいたら、僕はきっと甘えてしまうから」
甘えて良いと、リグは言うだろう。
でも、それじゃあ駄目なのだ。決心が鈍れば、自分の身が危ういことを、ザークはしっかりとわかっていた。
リグは、自分を守ろうとしてくれるだろう。自分のせいで、リグが傷つくのを見るのは、嫌だった。
「ザーク、じゃあ、約束してくれ。必ずここに帰ってくると」
ザークの決心は揺るがないのだと、リグは感じ取ったから。だから、約束をした。
「必ず、戻ります」
冷たい印象、固い口調。
自分を律しようとする時の、ザークの癖。
「わかった、ここで待ってる」
リグは頷くと、ザークの部屋のリビングにいることにする。
これ以上言っても、ザークは折れない。
リグが一緒に行くことを、絶対に許そうとしないだろう。
なら、自分はここで、きっと疲れて帰ってくるザークを待つ。待って、ねぎらってやれば良いのだ。
ザークが安心して落ち着けるように、ここにいれば良い。
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