第一章

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「僕の友人が一人、行方不明になったんです。三日前くらいからなんですけど。彼、一人暮らしなので、何時くらいからとか詳しいことはわからないんです。でも、今騒がれている吸血鬼事件の犠牲者の中には今のところいないんです」  そこで言葉を切ったロイは、鞄の中から一枚の写真を取り出す。写真には同い年の友人が映っている。それを、静かにテーブルの上へ、ザークが見えるように置いた。 「アキラ・トウジョウ(東城章)と言います。日本人の留学生で、僕と同じ十九歳です」  言ってザークを見ると、それまでずっと笑顔だった彼が、厳しい顔つきに変わっていた。  典型的な日本人という顔立ちをしている彼は、人込みの中で結構目立つ存在だろうと思われる。身長は、比較対象が建物なのでしっかりとはわからないが、日本人にしては高いのではないだろうか。スポーツを何かしているのか、恵まれた体格をしている。髪は綺麗な黒髪……。
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