第十章

6/14
前へ
/168ページ
次へ
 多分ただの興味から。人を殺す場面を見て、声をかけてきた人間への、興味なだけ。 「アイリスと言うの。あなたが持っている力みたいなのを知りたいのよ」  私は自分の欲望に忠実だったから、だからアジスタに声をかけてそんなことを言えたのよ。  アジスタは退屈しのぎに丁度良い、なんて言って、私の家族を見てくれた。  だから、あの子はどんなことがあろうと光なのだと知ったのよ。  だから、あの子がアイツに出逢ったことも知っていた。  アジスタが家へ戻ると言ったのは、きっともう興味を失くしたから。  私が死んで終わりだと、わかったから。  またきっとアジスタは言うのよ。「退屈だ」と。  まぁでも、長い間、アジスタの退屈しのぎはしてあげられたとは思うから、それで許して頂戴。  私は最初の時から変わらず、自分の欲望に忠実なのよ。  あぁ、きっとそれがわかっていたから、これで終わりだと、アジスタは終止符を打ったのね。  感謝は、これでもしているつもりなのよ。  ただ、アジスタのこともどうでもよくて。  私には、あの子がいてくれたらそれで良かったから。  これから先、アイツに渡してしまうことになるんだけれど。  それでも、あの子は自分の手で殺した私をきっと忘れやしないから。それで良いの。 「私を殺す時、あの子は私だけのものになるのよ」
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加