第十章

8/14
前へ
/168ページ
次へ
 僕は何もしてあげられなかった。助けてあげられなかった。  悔いて嘆いて、泣き喚いたところでどうしようもないのはわかっているのに。  あの状況で、どうやって救えた?なんて逃げ道を探したりして。 「ザーク、先に謝っておく。ごめん」  突然リグは話し始めた。 「え?なに?」  何故、リグが謝るの?  リグに対して自分は幼い子供のままだ。わからないことが多すぎで不安になってリグを凝視してしまう。  リグはしっかりと僕の目を見ていた。 「今回のことは、俺は全く知らない。それは信じてくれ。ただ、謝るべきことがある」  真っ直ぐ僕を見たまま、紡がれるリグの言葉は、いつになく固くて。どこか緊張をはらんでいて。  これ以上何かが起こるのはもう嫌だったけれど、それでもリグの話しを聞かない選択肢は浮かばなかった。  むしろ、この混沌とした状況を、打開できるのではないかと、そう思った。 「アイリスが、闇にのまれて狂ったのは、俺のせいだ」  静かにリグが告げる。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加