第十章

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「アイリスを吸血鬼にしたのは俺じゃない。シアンでもないって、あいつは言ってた。でもいつの間にか俺たちと共にいたから、多分だけどアジスタだ。でも、吸血鬼になっただけなら、闇にのまれることはない。狂うこともない。俺が、アイリスの光を奪った。お前を、俺が、アイリスから奪ったから、アイリスは狂った」  リグの言葉一つ一つが、ゆっくりと脳内に入ってくる。 「リグといるのを選んだのは、僕自身だから、リグが謝るのはおかしいよ」  我ながら、小さな呟きだったと思う。  そう、選んだのはまぎれもなく僕自身で。だから、リグが謝る必要なんてないのに。 「シアンに言われて気付いた。アイリスは、どうやって正気を保っているんだ?ってな」  あの時、シアンに連れて行かれたリグも、衝撃的なことを言われていたんだ、とボンヤリする頭で考える。  僕は、ずっとリグにすがって生きてて、アイリスはかわらずそこにいてくれるんだって信じてた。何の根拠もないのに。  アイリスが、どうやって正気を保っていたか? 「わからない……」  静かに答える僕の声。  わからないのだ。本当に。闇にのまれるとはどういうこと?
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