第十章

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「でも、俺たちは、闇に限りなく近いから、狂えばすぐに闇の住人になって、光の中では生きられなくなる。俺にはザークがいたから、俺は狂わない。シアンにも光があるって言ってたな。アジスタは知らないとも言ってたけど」  僕自身が光だから、僕は闇の住人にはならない……。  リグには僕がいるから、闇の住人にはならない……。  シアンも、光がある……。  アジスタのことを知らないのは、兄弟も同じらしい。 「じゃあ、アイリスはどうなんだ?ってシアンに言われて気付いた。遅すぎるけどな。アイリスの光はザーク、お前だった。でも、その光を、お前を、俺はアイリスから奪った」  あ……。  納得した。心が、震えた。 「アイリスは……」  僕はいつから、姉のことを名前で呼ぶようになったのだろうか?  いつから、アイリスと呼んで、距離を取ってた?  僕が離れたから、狂って闇の住人になった……? 「アイリスについては、吸血鬼になった時点で狂いがあったと思う。それでも、お前がいたから、今まで生きれてた。吸血鬼になった時既にアイリスは闇の住人だったんだ。思い出してくれ。アイリスは、光の中を平然と歩いていたわけじゃない。なるべく光が、太陽が落ちてから、出歩いていた」  はっとする。  たしかに、そうだった。昼間に会っても、それは僕の家の中とかで、なるべく光から離れた遠い場所にいた。 「だから、お前が傍にい続けてたとしても、かわらない。かわらなかった。もう、アイリスを救うのは、死だけだ」  静かに、リグが残酷な通知をする。  僕は本当に、何もわかっていなかった。わかろうとしなかった。  本当の死を受け入れずに、僕のそばにいると言って吸血鬼になった姉に、僕は何もしなかった。  ただ、姉が、アイリスが、そこにい続けるんだと、勝手に思い込んで。 「僕が全ての元凶……」 「違う!」  強い声で否定された。 「お前がいなきゃ、俺は生きられない。俺まで狂うことになる」 「それは嫌だ!」  次に声を張ったのは僕だった。リグが狂う?いなくなる?  耐えられるはずがない。 「お前を見付けたから、俺は狂わなかった。本当は、あの頃狂いそうなほどの闇を抱えてた」
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