第十章

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 そうだ。あの時俺はザークに出逢ったから、狂わないですんだ。  ザークに救われたのは、俺。  狂いだしそうな凶暴な心内を抱えて、俺は人の中に立っていた。  別に誰を狙おうとか、思ってたわけじゃないし、このまま闇にのまれてたまるか、という思いもあった。  でも、俺をさいなむ凶暴性が、簡単に消えるわけでもなく。  このまま狂ってしまおうか、なんて考えてもいた。 「人に害をなすつもりでないならば、私はあなたを見付けたことを無視しましょう」  凛と通る幼い声。  目を見開いてみた相手は、本当に幼くて。それでも内に秘めた力の強さの波動と、声と同じ凛とした光輝くオーラに目を惹かれた。  こいつだ。直感で確信した。  俺は、コイツを待っていたんだ、と。  ここにいたのは、コイツと俺が出逢うため。  不思議と今まで抱えていた凶悪な心は霧散していた。 「お前に逢わなかったら、俺は狂って、闇に堕ちて、もうこの世界にはいなかった」  あの時を忘れたことなんて、なかった。  ザークと初めて出逢った時、簡単に霧散した俺の凶暴性。  ザークといることで、俺は闇にのまれず、狂わず、生きられた。
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