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「アジスタに、頼むか」
ポツリと俺は呟いた。
ザークはきっと、なんのことかわかったはずだ。主語はなかったけど。
俺はお前を守るためならなんでもできる。
だからもう、アイリスのことで悩むな。
アジスタに会いに行くかと、立ち上がりかけた俺をザークが制した。
「僕が、……僕が、アイリスを……終わりにします」
はっきりと、きっぱりと。静かにザークは言いきった。
「無理するな。無理することじゃない」
ザークの瞳の薄茶色の中の金が揺らめく。
「無理じゃない。僕を救ってくれていた姉を、僕はちゃんと救いたい」
静かな声が、ザークの決意を表していて。
止めても無駄なんだと、気付いた。
アイリスを救うのはもう死しかない。そう言ったのは俺だけど。それはたしかなことで。
ザークも感じ取ったから、だから姉を救うという表現をしたのだろう。
本来訪れるべきだった死を、アイリスは受けずに、闇の住人として長い年月を生きてきた。
狂う心を、必死につなぎ止めていたのだろう。
だから今、爆発している。
アイリスを、解放してやることが、救いになる。解放してやらなければ、アイリスはずっと暗い中を、狂いながら生き続けることになるのだ。
狂気にのまれる、闇の住人になるとは、そういうこと。
闇の世界にいるだけなら、問題はないんだ。狂気にのまれたことが、大きな問題。
「アイリスを、解放してやってくれ。俺が言うのは間違っているのかもしれないが。一歩間違えれば、俺も同じだったから」
ザークをそっと抱きしめる。
この子がいたから、俺は生きていられるんだと、痛感して。
アイリスに、ごめんと心の中で呟いた。
それでも、この子を手放せやしないから、ごめん。
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