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パタンと玄関の扉が閉まる音がした。
見送りはしなかった。ついて行きたくなる自分をきっと抑えられないだろうから。
カーテンの隙間から、丸い満月が下界を見下ろしているのが見えた。
「あら、ザーク来てくれたのね」
嬉しそうに姉は言った。
わかっているのに、自分が来た理由を。
姉自身が言ったではないか……。
なのに、何故、嬉しそうに迎え入れるのか。
「丁度、満月ね」
フフフと、姉は上機嫌だ。
大丈夫なんじゃないかと、錯覚させるほどに。
それでも、入ったこの部屋は、姉が残虐に一人の少年の命を奪った場所で。
血の臭いと、汚れはそのまま残っていた。
「あぁ、ココは駄目。ふさわしくないわ。私の部屋のほうが良いかしら。いいえ、そうね……屋上、かしら?」
姉は一人で呟いて、ついてきてとまた部屋を後にする。
「姉さん……」
静かに姉を呼んだ僕へと振り返り、姉は上機嫌な笑みをさらに深めた。
「久しぶりにそう呼んでくれるのね、ザーク」
僕は言うべき言葉があったはずなのに、何も言葉が出てこなくなってしまって。
どうしてですか?なんて今更な質問をしをうになって。
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