74人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
そう、今更過ぎるのだ。気付かないで、今まで甘えて……。
ガチャリ
姉が開け放ったのは、屋上へと続く扉。
「ねぇ、ココはとっても綺麗じゃない?満月が、とてもキレイに見えるのよ」
先に屋上へと出て行った姉が、僕を呼ぶ。
ここへ来て、と。
静かに僕は、屋上へと足を踏み出した。
姉の瞳は金色に染まっていて。以前は僕と同じ薄茶色だったのに。
何故気付かなかったのだろう。姉の変化に。こんなに顕著に表れていたのに。
「満月は、あなたみたいね」
なんて、とても楽しそうに。
僕は言うべきはずの言葉をどこかに置き去りにしたまま、姉へと歩み寄っていく。
「とても綺麗に輝いているのに、自分自身では輝けない。月は、自分が輝いているのを知っているのかしら?」
姉の独り言ともいえる言葉は続く。
最初のコメントを投稿しよう!