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ポツリと浮かぶ月を、じっと見ていた。
帰らなきゃ、リグが待ってる。
そう思うのに、ザークの足は動かなかった。
約束を、したのに……。
「ザークさん、でしたか」
聞き覚えのある、優しいテノール。
「……タチナ?」
静かに、屋上へと上がってきた人物は、ザークを見てホッと息を吐いた。
多分、強い力の波動を感じてここまで来たのだろう。
この場所は、光の中にいる彼にはふさわしくない。
「怪我をしてはいないようで、安心しました。さきの強い力は、ザークさんのものだったんですね」
ふうわりと、彼は微笑む。
前のように、ザークの心を癒すかのように。
怪我を、心配されてしまった。
確かに以前、怪我をしていたところを見られてはいたけれど。
まさか、心配をするなんて、僕は人外のモノなのに……。否、タチナはそれでも治癒をしてくれるほど、優しい人間なのだ。
誰のことであろうと、怪我をしていれば心配するのだろう。
「僕は、自分のことばっかりで、与えられることが当たり前で……なにも、なにもしてあげられなかった……」
タチナには、訳のわからない話しだろう。
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