第一章

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 唐突に思い出したのか、明るさを保ったまま自己紹介をしたロイが、言葉を濁す。 「ロイ君ですね。私のことは、ザークで良いですよ。皆そう呼びますからね。言い淀んだのはお金のことですか?」  また、元の優しい笑顔に戻って話すザークを見ながら、ロイは頷く。 「うーん、そうですね。ロイ君が生活に支障をきたさない程度で、今から調査終了期間までで支払える金額でかまいませんよ」  ロイの表情の変化を楽しげに見ながら言うザーク。 「え?でも、それじゃあすごく少ないと思うんですけど……」  困惑気に言うロイに、 「出世払いでも良いですよ」  とあくまで気楽なザーク。  何と返して良いかわからなかったらしく、ロイは困惑した表情をさらに深め、ザークを見つめる。 「本気なんですけどね。今現在特に生活に困っていませんし」  変ですかねぇ、とザークは本気で悩んでしまっている。 「あ、あの、じゃぁ、お言葉に甘えさせていただきます。出世払いでも良いですか?」  少し慌てたようなロイに、 「ええ、かまいませんよ。ただし、住所と電話番号は変わったら必ず教えて下さること、が条件です。あ、現在の住所などは、この紙に書いてもらえますか?」
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