第十一章

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 否、リグがいても子供なんだけど。年月ばかりが経ちすぎて、長い時間を生きてたけど、子供のままで。  でも、このままじゃ、きっとこの優しい人にも、何もできないで終わってしまう。 「良かった」  そっと吐き出された安堵の息に、僕は不思議に思ってタチナを見返す。  綺麗な瞳はくもり一つない。 「笑ってくれたから」  そっと言われた言葉に、既視感を覚える。  あぁ、そう言えば、前にも僕が笑ったことで彼は安堵していた。 「心配ばかりかけてるね、僕は」  こんな僕にもこんなにも優しいなんて。最初は八つ当たりまでしたのに。 「タチナは優しすぎる」  人として、生きていくのに苦労するんじゃないか、と思ってしまうほど。  タチナは笑った。綺麗な優しい笑顔を見せてくれた。 「僕はただ単に、自分勝手に動いているだけですよ。なにも事情を知らないのに、あなたの方が生きているのに、知ったような口をきいている」  そんなことはないと思う。少なくとも、僕は救われてる。 「僕はまた、与えられるだけになりたくないから、タチナ、あなたに恩返しがしたい」  やんわりと笑っていた彼は、少し驚いたように目を見開いて、それから困ったような顔をした。  困らせて、しまったのか。  長く生きていても、人の心なんて全くわからないんだ。  わかろうと、してこなかったから。 「お言葉だけで。僕明日、日本に帰るんです」  あぁ、と溜め息がもれてしまった。  これだけしてもらったのに、救ってもらったのに、僕はまたなにも返せないのか?
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