第十一章

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「僕ね、日本に行くことにした」  帰ってくるなり口を開いたザークに、リグは唖然とした。  なんだ、ザークに何が起こったんだ?  きっと疲れて、憔悴しているだろうと、思ったのに。  晴れやかに言い切ったザークはすがすがしいほど笑顔だ。 「唐突だな」  いつまでも呆けてはいられないので、リグはそう言葉を返す。  本当に、何が起こってるんだ?俺の知らない間に。リグは頭を抱えたくなった。  昔、ザークがリグの家を出ると言った時と同じくらい衝撃だ。  否、まだ居場所がわかっているだけ良いのか?日本は島国で小さいから、世界中を自由に飛び回っていた頃のザークを探すより、手間はないだろう。  が、置いて行かれる気もさらさらないので。 「何でいきなり日本なんだ?」  今まで、日本には行ってなかったと思うのだが。 「あれ、言ったよね?日本人の友人ができたって」  ザークは頓着していないのか、あっけらかんと言う。  お前、アイリスに殺されたのが日本人だと忘れてないか?否、忘れ去ってて良いんだけど。  なんだ、この敗北感は。 「もしかして、またそいつに会ったのか?」  だからこんなに晴れやかなのか、と。
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