74人が本棚に入れています
本棚に追加
「タチナがね、日本に来るならどうぞって。部屋は空いているから気にしないで来て良いって」
なんだ、この敗北感は(三回目)。
タチナ、強敵すぎるぞ。おい。
「あ、それでね、タチナが恋人紹介してくれるって。僕もリグのこと紹介したいし、一緒に行きたい人がいるって言ったから」
タチナ、お前には恋人がいたんだな。良かった。なんてリグが思っているとはつゆ知らず。
「うーん、でもある程度の家具はそろってるって言ってたし……服とかそんなくらいで良いか、持ってくの」
やはり持ち物にはあまり頓着していなかったらしいザークは、なにやら楽しそうに荷造りを始めている。
今から荷造り……徹夜でもしてやりそうだな、ザーク。とリグは思う。
そう言えば、世界中飛び回ってた頃も、唐突な思い付きからかいきなり夜中に荷造りとか、よく有った。
俺は覚えている。この光景を……。
これはもはや、なにを言っても仕方がない。
「まったく。お前はいつも唐突だな」
あの頃を思い返して笑ってしまう。
「そんなこと言ってないで、リグもリグの荷物まとめてよ。僕、リグのはやんないからね」
完全に、固い口調はなくなっている。
それに、あの頃はどこへ行くとも何も教えてもらえなかったし、こんな風にリグに荷造りを一緒にさせることもなかった。
「僕は怖かったんだと思う。リグにすがって生きるだけの僕が、リグにいらないと言われたらって」
「言ったろ。お前に怨まれてでも、お前がいなくなることに耐えられなかったって」
「うん。だからね、僕は本当にこれから先、リグの為だけに生きようかと。リグにいらないなんて、絶対に言わせないから。傍にいてください。僕を傍に居させてください」
「あぁ、離れるなんて許してやんねぇよ。お前の全てが俺のものだ」
最初のコメントを投稿しよう!