プロローグ

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 アメリカ……とある州。  街は夜の闇が覆ってしまう事もなく、何色ものイルミネーションが煌めいている。  そんなネオンの煌めきが届かない、路地裏の片隅。  黒猫が飛び出して、音も立てずに街中の雑踏へ消えていった。  闇と静寂が支配しているこの場所に、少年が酔い潰れて寝ているのか、壁に背を預けて座っていた。  否……、酔い潰れて寝ているわけではなかった。  その少年は、もはや物云わぬ躯と化していたのだ……。  ーーあの猫は、この躯に驚いたのだろうか……。  毎夜、この街に起こる不可思議な事件。  いつから始まったのかさえ、もう誰にもわからないだろう。  犯人を除いて……。    一歩、路地裏の明かりの届かない場所に踏み込めば、毎夜、少年の犠牲者を一人、二人と出すのにもかかわらず、ネオン街は煌めき、そして人々は溢れかえっていた。  今夜もまた、一人の少年の犠牲には気付かずに、街は明るい顔を見せていた。  少年は独り、暗闇の中で自分が発見されるのを静かに待っている……。
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