第一章

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「あー。僕ってこんなに優柔不断だったんだなぁ……」  心を決めて、大学を出て、ここまで来たはずなのに、ロイは呼び鈴をなかなか鳴らすことができずにいた。何度となく、押せない呼び鈴を眺めては、溜め息と吐く。  買い物に行って、迷うだけ迷って、結局何も買わずに帰る。そんな気分だ。  ロイの足は、エレベーターへと戻りかけ、でも、と思いとどまり玄関の前にずっと突っ立ったままになってしまっている。 「だいたい、警察だってまともに対応してくれなかったし。いくら昨日行った探偵さんの紹介だからって、ここの人がちゃんと対応してくれる、なんて保障はどこにもないし……。あぁぁー。やっぱり、帰ろうかな」  一人でブツブツ呟きながら、エレベーターへと踵を返した瞬間、唐突に目の前の扉が開いた。
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