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窓から脱走した時には分からなかったが、この屋敷の様子からして、レイドクラフトはかなりの金持ちなのだろう。
しかし、清潔にされ整然とした廊下は美しいのに、レッドにはそれ以上に全体が暗く淀んでいるように感じた。
屋敷はキレイだが、どこか空気が重いのだ。
まるで、レイドクラフトの暗さが、そのまま屋敷にのり移っているかのように。
時折出会うエプロンドレス姿の召使いも俯きがちで、覇気が感じられない。
こんなところで暮らすのか……。
ただでさえ訳の分からない状況で不安なのに、この雰囲気はさらに気が滅入りそうだと、レッドは辟易した。
けれど、レッドにはここ以外の選択股は用意されていない。
我慢するしかなかった。
いつくかの角を曲がり、執事がとある扉の前で止まった。
廊下の両壁には同じ扉がいくつも並んでいる。
「ここがあなたの部屋です。これから、あなたはこの屋敷で働くこととなります。仕事は明日から。明日の早朝に迎えに来ます」
無愛想なままそれだけ言って、執事は来た道を戻って行った。
暗い主に無表情の執事、生気のない召使い達。
そして、女のレキアント。
一刻も早く元の世界に戻りたかった。
扉のノブに手をかけて回し、ため息を吐きつつレッドは部屋の扉を開いた。
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