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陽が暮れると薄っぺらいカーテンで閉ざされた部屋は更に暗さを増していき、電気を点けたくても5歳の… 立ち上がる事が出来ない男の子には電気を点けるための細い紐にすら手が届かない。
何度となくアパートの階段を昇る音や廊下を歩く音がするたびに、「帰ってきた!」 と喜ぶものの扉は開かれる事は無く待ち望む母は帰っては来ない。
薄い壁のせいで隣の住人の出すテレビの音や学校帰りの子供たちのはしゃぐ声に車が通る音、散歩を楽しむ犬の声や遠くから聞こえる電車の音、家路を急ぐであろうサラリーマン。
物音1つ立たない部屋の中、男の子の耳に届く音はどれも彼の欲しい音では無い。
春先であったが夜はまだまだ冷える。
「おかあさん…」
男の子は消え入りそうな声で母親を呼ぶが、返事はかえってこない。
きっと朝になれば母親は戻ってくる。
そう願って男の子は布団に潜り込み、不安と恐怖に包まれながら眠りについた。
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