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「先生、真琴は… 真琴はっ!?」
白い壁に白いカーテンと白いシーツにはシミ一つ無い。
全てが清潔に保たれている病室のベットには小さな、本当に小さな男の子が沢山の管に繋がれたまま眠っている。
病室に入るなり初老の女性に呼びかけられた医師の白井新一郎は、真琴の祖母である 片野節子 を見た。
節子は真琴と白井を交互に見ながら震える両手をギュッと握りしめていた。
白井「発見がもう少し遅かったら助からなかったでしょう。 かなり衰弱していますが、もう大丈夫ですよ」
節子「ありがとうございます… 本当に… ありがとう…」
節子は白井の言葉に青ざめたが大丈夫と聞いて少しだけ安堵し、言葉を詰まらせながらも深々と頭を下げた。
白井「真琴君が目を覚まして容体が安定したら検査を行います。 外傷はありませんが… 心配なのは心的外傷の方です。 そちらの方は精神科の医師の方から詳しい説明があると思います。 それと、真琴君本人にも警察から色々聞かれると思いますが、それは真琴君の容体を見ながらにしましょう」
子供がこんな目にあうのは許せない ましてやこんなに幼い子供が食事も貰えずに放置されていただなんて… こんな仕事をしていれば何度となくそんな患者を診るがそれでも慣れる事は一生無いだろう。
白井は頭を下げている節子にすら憤りを覚えたが、表に出すことなく淡々と話しを続けた。
一方で警察という言葉に節子は恐れを感じていた。
自分の娘が犯罪者になるのか自分の娘が我が子を捨てるなんて… こんなにも哀れな孫が可哀想で、娘が許せなくてそんな娘に育てた自分が情けなくてどうしたらいいのか分からないまま真琴の小さな手を握った。
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