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「鳥って……あの翼を動かして、空を飛ぶんだよな」
鳥の羽ばたき。
それは、いったいどんな動きなんだろう。
鳥が羽ばたくと、どんな音がするんだろう。
鳥の鳴き声って、どんな声なんだろう――。
生まれたときからこの世界にいる一刻は、それらを知らないし、永遠に知り得ない。
鳥の周りには、木の葉も何枚か浮かんでいた。
木から離れたところで浮かんでいる、ああいう葉っぱは、「風」というものに吹かれた葉なのだろうか。
風って、どんなものなんだろう。
「ものすごく大きな息みたいなもの」と、母は言っていたけれど。
そんなの、ぜんぜん想像がつかない。
かつては時間の流れる世界にいた母と、生まれたときから時間の止まった世界にいる自分。
あの人が知っていて、自分が知らないものは、いったいどれだけあるのだろう。
それは、きっと、あまりにも限りないに違いない。
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