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私が泣き止むまで、杉野くんはずっと傍で私の頭を撫でていた。
私はそんな彼の優しさに心から感謝した。
彼と別れ、クラスに戻ると海音が「見たぞ」といたずらっぽい笑みを浮かべてきた。
「告白するんでしょ?」
私は先程の彼の優しさを思い出していた。
そして、背を向けようとしていた己の言葉ともう1度向き合う決心をした。
-もう、迷わない。
海音の問いに強く頷くと海音は満足そうに笑い、私の元に歩み寄ってくると、杉野くんが今、丁度中庭にいて、例の桜の木の近くにいるところを見たと、そう教えてくれた。
ありがとう、と私が海音に例を言おうとした時だった。海音が私のことを突然強く抱き締めてきた。
「想いを伝えるってことは怖いと思うけど、頑張んなよ。」
そう言って、私の腰に回す手に力を込めた。
「海音…ありがとう」
彼女の優しさに私はいつも助けられてきた。
今回の文化祭でだって、最初から最後まで彼女は全てを手伝ってくれた。
-海音が友達で、本当に良かった。
そんな私を思ってくれる彼女の言葉に背中を押されながら、私は杉野くんがいるはずの中庭に向かって走った。
果たして、彼はそこに居た。桜の木の下で桜を見あげその見事さに感嘆の声を上げていた。
「杉野くん!」
私の声に彼が振り返る。
風がさぁっ…と軽やかな音を立て、花びらを舞わせながら、私と彼の間を通り過ぎる。
杉野くんが私を見て「姫川」と私の名を呼びながら笑う。
その笑顔にまた彼に1つ恋をした。
「私っ-----・・・・・・・・・・・・!」
『鈴蘭祭の日に好きな人に告白すると、その想いは成就する。』
その伝説を胸で反芻しながら、頬に熱がたまるのを感じながら、
-私は口を開いた。
FIN
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