決意

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それからというもの何かあったら杉野くんは私のことを約束通り助けてくれた。そのたびに私の頭を軽く撫で、優しく笑いかけるものだから私はどんどん彼に恋をしていった。 変化していったのは、私の気持ちだけではなかった。 文化祭の準備の方も杉野くんのおかげで、クラスは次第にまとまって来て、最初は4~5人だった居残りメンバーも次第に増え、遂には残る意思のなかった役者の子たちまできちんと残って大道具や小道具などの製作を手伝うようになった。 そして劇の方も役者たちの最初のやる気のなさはどこへやら。皆で一つの劇を作り上げようという雰囲気で、練習から全力を出して演じるようになり、みるみるうちに劇は良い作品へと姿を変えていった。 ステージでのリハーサルでは役者全員が声を張り、少しでも遠くに届けようとする意志が感じられるまでに。そんなリハーサルでのみんなの様子に、私は思わず涙していた。そんな私を見て杉野くんは「大げさだなぁ。まだ賞をとったわけじゃないんだぞ。」と苦笑しながらも、いつものように頭を撫でてくれた。 杉野くんはそう言ったけれど、みんながここまで力を貸してくれるようになったのは杉野くんが皆に声かけを毎日諦めずしていたおかげ。リハーサルを通して私は改めて、彼にすごく助けられたのだと、そう思った。 ―そしてまた、彼のことが好きになる。 リハーサルが終えてから私は海音のもとに行った。 「なあに?」と眠そうに言いながら首を傾げる海音に”杉野くんのことが好きになった”と話すと海音はいたずらっぽく「そうかぁ、やっぱり…。」と呟いて、 「文化祭の時、劇が賞に入ったら告白しちゃいなよ。」 と笑った。 「無理だよ。」と私が笑うと、海音はその言葉にむっとした顔をして突然私のことを強く引き寄せ耳元で囁いた。 「いいこと教えてあげる。この学校に伝わる都市伝説?っていうか伝統なんだけど、鈴蘭祭の日に中庭にある桜の木の下で告白すると、その恋は成就するんだって。」 「ふーん…?」 「……だから、まだ諦めんなって言ってるの!」 海音はきょとんとする私の鼻をつまみ、「わかった!?」と念を押す。その痛み時から早く逃れたくて「ふぁかった、わはっらから!」と連呼したら、手は離してもらえたけれど、本当に?という視線を向けられ、咄嗟に小さくなる。 ―でもね勇気が出た。ありがとう、海音。 「決めた。私、告白するっ!」
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