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もう勝手にしろ、この程度ならあまり対価も必要ないかと読子は彼らを見放すつもりでトリックを使う。
「直接会ってみて良い方法が思い浮かびましたよ」
「本当ですか?」
「アナタ───」
読子の問いかけに正太は頷きその場はお開きとなる。
翌日、大学に腕を組んで登校する男女が居た。
正太と桃花の二人である。
読子に相談したのを境に桃花のストーカー癖や嫉妬深さはすっかりなりを潜めたのだが、正太は少し釈然としていない。
「桃花と付き合うことになったんだってね。おめでとう」
懇意にしていた女子達からこのようなメールが何通も届いたからだ。
そう、あのときを境に二人は交際を始めていた。
正太にとっては読子の力で桃花を強制するための代償としてのモノのため、まるで酔った勢いにしか思えない。
実際に読子の「今すぐ彼女のストーカーを止めさせますか?」という問いに頷いてからの記憶は正太にはなく、気づいたときには自宅のベッドの上に桃花と二人で抱き合っていたのだから。
昨晩の様子を聞かされた正太は「彼女は出来たし童貞卒業したのは良いけど、その記憶も無ければ狙っていた他の子達からも見放されて損の方が大きくないか?」と心の中で呟いた。
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