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松葉杖をとったガイコツは俺にそれを手渡した。
「すいませんありがとうございます。えっと、気をつけてくださいね」
そのまま松葉杖を彼女に渡し、体制を崩さないよう手助けをしてから手を離した。
「わざわざ申し訳ないですわ」
「気にしなくていいですよ、困った時はお互い様です」
「ふふ、優しい方ですのね?」
見ていて癒されるような、そんな笑顔を彼女は浮かべる。
「申し遅れましたわね。わたくしはロロット・ルサージュ。人間、いや世間からは……魔王と呼ばれている存在でしてよ」
「……え? 魔王様?」
嘘だろ、こんな美少女が魔王? 俺が知ってる魔王って言ったら、頭と両手だけだったり、ある程度ダメージを与えたら姿が変化したり……。
「あ、もしかして更に肉体が変化とかするんですか?」
「変化……? いえ、わたくしはわたくしですわ。特にそういったことはしません」
その姿が最終形態の魔王…? こんな可愛い人の元で働けるとか魔王軍ホワイト企業なんじゃないの?
「ということは本当に魔王様?」
「えぇ。多分貴方の住む世界の神によって命じられた討伐の対象ですの」
魔王と呼ばれるロロットは含みのある笑顔を見せた。
「そして……それを知ったミズシロさん? 貴方はどうするのです? わたくしを殺しますか?
勇者が倒すべき相手はすぐ目の前でしてよ」
ロロットは松葉杖でバランスをとりながら手を広げ、何も持っていないし抵抗をしないという意思を見せる。
「えっと、俺は……」
言葉が詰まる。
今ここでロロットを殺せば、せっかく始まった俺の異世界ライフは終わるかもしれない。
というか……こんな可愛くて美しい人を殺すなんてできない。
そこで一つの考えが俺の中に生まれた。
「俺はあなたを殺さない。そして、バカだと思われるかもしれません。
俺をあなたの軍、つまり魔王軍に入れてくれませんか?」
そうだよ。魔王の元につけばいいじゃん。魔王は殺さないし、俺は異世界ライフを堪能できるし、魔王は可愛いしいいこと尽くめじゃん。
それに俺、将来は可愛い人の下で働きたかったんだよね。
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