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「はぁ、はぁ、はぁ……」
身体中から滝のような汗が流れ、そのまま膝をつく。
「コータロー。そろそろ休憩しよう」
「次が最後でお願いします!」
「全く、その向上心は素晴らしいと思うが限度がな……仕方がない、今日はこれが最後だ」
「はい!」
すぐに立ち上がって拳を構えた。最初に比べて俺の構え方は随分と変わっており、腹部を守るための猫背に、脇を締めて拳を構えている。
ここ異世界に来てから十日余りが過ぎた。
そして今なにしてるかって言うと、魔王城内にある修練場で更に強くなるべく、ガイさんに稽古をつけてもらっていた。
今のままじゃあ、また良太に苦戦するだけだからね。スキルがあるとはいえ、そもそもが弱かったら意味が無いし。
「生憎、俺は剣だけを振るってきたから徒手空拳の知識は無いが、ここ数日でコータローは確実に強くなったな」
細身の長剣を構えるガイさん。
「それは嬉しいですね。ありがとうござい……ます!」
足に力を入れ、飛びかかるように距離を詰めてガイさんの眼前であえて左横に飛ぶ。
「なっ!?」
そのまま殴りかかってくると予見していたガイさんは剣で防御の姿勢を取っていたが、俺が消えたことにより驚きの表情をする。
あぁもちろんガイさんはガイコツだから表情は無いけどね。声色からの感覚よ感覚。
俺はすぐにバックステップをした後に拳が確実に捉える距離を掴むために一歩踏み出した。
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