普通で平凡で地味で代わり映えしない彼は微笑む

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「も、もしかして、人間とか別の生物を魔物に変化させる。そういう魔法とかあるんですか?」  嗚咽は止まったが、未だ涙は止まらない俺は意識をとにかくずらすべくガイさんに質問する。 「いや、そんな魔法は聞いたことがないから存在していないはずだ。あったとしても倫理から外れているそんな魔法、魔王様が使うとは思えない」  と、なると第三者による行動。それもこれの元凶が魔王軍だと思わせる行動。 「こんな人道から外れているような行動……一体誰が」  異世界には存在しない魔法。つまり異世界に存在しないなら……。 「この事件を起こしたのはもしかして……」 「普通に考えて、C組の誰かになっちゃうよね」 「考えたくはないが俺もそう思───」  ガイさんとは違う声が横から聞こえ、俺はその異常さからすぐに一歩下がって距離を取る。いつの間にいたんだ?  「あれ、どうしたの? 折角の再会なんだもん。普通に終わらせたくないでしょう? 孝太郎くん」  髪型も身長も服装も顔もまさに普通。人間に擬態したガイさんは顔だけは普通だけど、彼は全てにおいて普通。または平凡。または並。または無個性。そんな言葉たちが似合うほどの普通さ。  俺はこいつを知っている。 「お前、阿久津か? 阿久津 和成……?」 「うん、そうだよ。あぁ覚えてくれたんだ? 普通に嬉しいな」  嘘みたいに特徴がない声と共に、普通で平凡で地味で代わり映えしない彼は微笑んだ。
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