28人が本棚に入れています
本棚に追加
花火大会2
「頼む高橋!このあと買い物付き合ってくれ!」
「は?どうした幸。ずいぶん急だな」
ホームルームが終わり、教科書を鞄につめ帰ろうとしていた時、突然目の前に現れた幸に俺の帰宅は阻まれた。
「明日、花火大会があるだろ?」
「ああ、あるな」
「そこに着てく甚平を買いに行きたいんだ」
なるほど。だから誘いが急だったのか。
あれ、でも確か…。
「お前、甚平もう持ってなかったか?」
俺がそういうと、幸は「うっ」と声を詰まらせた。そして「持ってるけど、中学の時から来てるやつで少し小さいし、それにデザインも古いし…」とぶつぶつと独り言のように話だした。
そんな幸の様子を見て、俺は今日の昼休みの事を思い出した。
『ねえ、明日の花火大会行くー?』
『あたし、彼氏と行くよー』
『うわ、いいなー。てか、花火大会と言えばさ、やっぱ甚平だよねー。この雑誌にもさ、彼氏に来てほしい甚平特集載ってるんだけどさ、これとかよくない?』
『わー、めっちゃ良い!特にこれとか良くない?』
『あ、それいいよねー私も思った!てか最近の甚平って種類も沢山あっていいよねー。私も去年彼氏に甚平着てってお願いしたらさ、何年前に買いましたーって感じのサイズもあってない古い甚平着てきてさー。今年は新しいのかってよねって言っといたわ』
『それ大事。ただ甚平着ればいいってわけじゃないよね』
女子たちが雑誌を広げながらそんな話をしていたっけ。やけに今日の昼休み静かだなーと思ってたら、幸、その話気にしてたのか。
「いいぜ、行こう」
「まじで!さんきゅー高橋!」
今までの幸だったら絶対気にしてなかっただろうに、きっと今のこいつは咲ちゃんの事で頭がいっぱいなんだろうな。
そう思ったら、まあ、協力してやらない事もないかなと思った。
最初のコメントを投稿しよう!