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杖を手にした魔術師ピュグマが、長すぎるローブのすそを引きずりながら近づき、会話に参加してきた。
「平行世界と呼べば、わかりやすいのだ。〈魔術〉の有無という大きなちがいがあるけど……たがいに干渉しあっているふしがあって、文化にもそれほど差異がみられないのだ。言葉も、たとえば暦や単位、独特の固有名詞など、かんたんに変換できる程度のちがいしかなかったのだ」
「魔術、ね」
Qが杖を見た。
「それだけのトンデモ技術があれば、文化に大きなちがいが出そうなものだが」
「魔術でできることは、案外かぎられてるのだ」
ピュグマは説明した。
「魔術で可能とされてることは、ざっとあげて、炎・冷気・雷などのエネルギーを用いた〈破壊〉、肉体の〈治癒〉行為、魔法の武器〈召喚〉に魔力壁〈展開〉、〈念動〉力、生命〈探知〉、〈通信〉、〈念写〉……。魔術を用いるにはマギクスジェムと呼ばれる魔石の仲介が必要で、魔術師の杖の先端には、かならず埋めこまれてるのだ。魔術は万能ではなく、一種の道具としてあつかうのが現在の一般的な考えかたで──」
「〈通信〉?」
「複数のマギクスジェムを接続し、はなれたところでも通話したり様子を見たりできるようにする魔術なのだ」
「ふうん。携帯電話みたいなものか」
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