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「そっちの世界──魔術がないなら、こういうこともできない?」
ピュグマが杖から火柱を発生させた。
ぼくは呆然と、その火柱を見守った。
「ライターとか使えば、似たようなことはできるよな」
Qが言った。
「そう考えると、そんな変わらないか。こっちの人間が見れば、きっとアレだって、立派な魔術だろ。魔術は万能ってわけではなさそうだ」
「一種の道具としてあつかうのが現在の一般的な考えかたって話でしたね。プロファイルと一緒だ。あくまで犯罪捜査のうちの有用な道具の一つにすぎない」
「いま担当してる事件の話をしても?」
ぼくよりすこし背の低いピュグマは、こちらを見上げて訊いた。
「もちろん。お願いします」
ぼくがうなずくと、ピュグマはこめかみに手を添え、整理する様子を見せてから、口を開いた。
「事件は、首都の周囲にある、いくつかの宿屋や農家で起きたのだ」
「事件現場ですね。ある程度まとまった区域内で起きたということですか」
「現場を見に行くよりさきに、まずは、全体像を話したほうがいいのだ?」
「そうですね。捜査の方針を固めるまえに、各事件の分類をしないと」
「さっさと始めよう。観光にきたわけじゃない」
Qが言った。
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