9人が本棚に入れています
本棚に追加
口ではそう言いつつも、きっと観光したくてたまらないにちがいないと、ぼくは思う。
Qがその男前な性格とは裏腹に、ファンタジー小説やアニメが大・大・大好きだということを、知っていたからだ。
実際、部屋の奥であぐらをかいている獣人族モクの尻尾がフルフル揺れると、そのたびにQはそれを凝視している。
「Q」
「なんだよ。集中してるさ」
年上の相棒は、心外だなあと目玉を回した。
「この世界について知ることは、絶対にプロファイリングに役立つ」
「もちろん、それには同意ですけど」
「もきゅ?」
ぼくたちの視線に気がついたモクが、すばやい身のこなしで、こちらへ近づいてきた。
モクは、ぼくの手を握ると、いきなり引っ張ってきた。
「わっ?」
そのままぼくの頭は、彼女の──彼女の胸にはさまれ、顔をペロッと舐められた。
ざらざらとした感触だった。
おどろき頭をひっこめようとするぼくを見て、彼女は楽しそうに笑っている。
どうやら、からかわれているというか、もてあそばれているようだ。
「よし、恒一。そのまま、つかまえていろ」
いや、つかまっているのは、ぼくなんですが。
顔を動かしてQを見ると、モクの獣耳にさわって、うなられていた。
「集中するのだー!」
突然、ピュグマが声を張った。
最初のコメントを投稿しよう!