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「死体が、発見しただけでも四つ」
立ったまま説明を開始するピュグマの言葉に、同じく立ったままのQは顔を上げた。
その手には、コーヒーに似た味のするドリンクの入ったカップ。
寝覚めに効くだとか心拍数が上昇するだとか、世間的に言われる効能までおなじらしい。
ぼくとQは、便宜的に、その飲み物を「コーヒー」と呼称することにした。
だが、その色は紫色というブキミなしろものだ。
Qは気に入ったらしく、すでに三杯目に入っている。
「四つというのは、あいだを置いて? つまり……一度に四人殺したなら、大量殺人だ」
「ここ二節季のあいだなのだ」
この世界の単位で、ぼくたちの感覚で言えば、およそ二ヶ月。
ふん、とQがうなずいた。
「連続殺人か」
「連続しているとはかぎりませんよ。異なるアンサブによる、べつべつの事件かも」
木イスに座って、ぼくは可能性をあげた。
「あんさぶ?」
ピュグマが首をかしげた。Qが解説する。
「アンノウン・サブジェクト。氏名や身元が未確定の容疑者の呼称だ。──べつの事件の可能性か。そんな短期間のあいだに、おなじ地域で?」
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