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われ関せず、といった雰囲気で、これまでいっさい発言してこなかったナズナが、読んでいる本から顔を上げないまま、素っ気ない口調で簡潔に言った。
みんなが言いにくかったことを代表して言ったかたちとなったが、本人は気にも留めていない様子だ。
「冗談だろ?」
Qが指でこめかみを押さえた。
「よく調べもせずに?」
「こういうことに慣れてないのだ……社会自体が」
ピュグマは頬をかいた。
こいつはまいったな、といった表情で、Qがぼくを見る。
「魔術で可能な事柄のなかに〈念写〉というのがありましたね? 言葉からの連想でしかないですが……それはつまり、現場や遺体の、ぼくたちがいうところの写真、がのこっているということではないですか?」
ぼくの問いに、ピュグマがうなずいた。
「そうなのだ。魔術のこと知らないのに、どうしてわかった?」
「わかったわけじゃないですよ」
ぼくは苦笑した。
「そうじゃないと困る、というだけです」
ピュグマが進み出て、杖を持ち上げた。
真っ白い壁がスクリーンの役目を果たし、スライドのように写真が浮かびあがる。
「〈念写〉魔術を発動すると、杖に埋めこまれたマギクスジェムに、狙った先の光景が記録されるのだ」
ピュグマは、仕組みを説明した。
壁には、人の顔が映し出された。金髪の女性だ。
「いちばん最初に起きた事件。被害者の名前は、アリステア」
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