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ピュグマが流ちょうにつづける。その声に、未熟さは、ない。
「首都を出て街道を西に進んだとこにある、小さな宿屋を経営してた。生前の念写は、知り合いの魔術師が持ってたのを、こっちの杖のマギクスジェムに移したもの」
つづけて、遺体の写真が映し出された。
土の上に横たわり、服はほとんど着ていなかった。全身に傷があり、犯行の痕跡があった。
写真が切り替わる。全身を写したもの、細部のもの……。
ピュグマは、軽く目をそらした。
のこりの人間は、顔をしかめながらも、見つづけた。
抵抗はないのかといぶかしんだが、すぐに思いいたった。
この世界では、魔獣との戦いが日常茶飯事だ。
血や死体は、ぼくたちの世界の人間よりも見慣れているにちがいない。
「刃物で刺されているな」
Qが言った。
「めった刺しだ」
「傷口の大きさや状態から見て、得物はダガー」
ボソッとつぶやいたナズナの観察眼に、Qは感心した様子を見せた。
「わかるのか?」
「そのすべてが致命傷じゃないことも、わかる」
「いたぶってる……?」
ナズナの言葉に、ピュグマがつぶやく。ぼくはうなずいた。
「でも、防御創がないですね。抵抗できないよう、拘束されていた?」
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