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細部を見ると、ロープのようなものでしばられたらしきアザが見受けられた。
「犯行中はしばられていたとしても、最初につかまったときは? 突然襲われて抵抗できないまま気を失った……不意打ちか、顔見知りの犯行か……」
「この刺し傷」
Qが壁に近づいた。
「出血量に差がある。傷のいくつかは、死後のもののようだ」
「どの傷ですか?」
「顔面がとくに多いな。顔の傷のほとんどは、あきらかに、死後につけられている」
「死体への損傷行為、ですか?」
「そのようだな」
「どうしてでしょう」
「なにか隠したいものが被害者のからだにあったか──」
「歯形とか?」
「コーフンして被害者を噛むヤツは多いからな」
「これらの刺し傷……一つ一つが正確な攻撃ですが、どこか感情的な刺しかたです。傷の深さにムラがある。アンサブの性的嗜好かも」
「殺すことそのものより、刺すことを楽しんでいる?」
「ありえます」
「犯罪に不慣れな世界だ」
Qがアゴに手を添えて言った。
「たしかに、あまり凝った捜査かく乱はおこなわれていないとみて、いいだろうな。歯科記録との照合、なんてのもないわけだし」
「歯形から個人を特定する手法……なるほどなのだ」
ピュグマが、しきりに感心してみせる。
ぼくは、写真の一枚一枚を、くまなく観察する。
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