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「殺害地点ではない……それなら」
ピュグマの手で、画像がふたたび切り替わる。今度は、屋内のものだ。
「被害者が経営してた宿屋の地下室が、あやしいのだ」
「地下室ですか。うってつけですね。どうして、あやしいと?」
「いくらか血の跡があったとの報告があるのだ。衛兵は、この地下室はただ被害者を連れ去った場所であるという結論にいたっているようなのだ」
「たしかに、襲撃地点にすぎないという可能性もありますが……この空間環境なら、おそらく殺害地点でもあるでしょうね」
「血の量が、あの傷でいくらか、というのはおかしい。もしここが殺害地点だとするなら、拭き取ったことになる」
Qが指摘する。
「さすがに、殺害地点を隠したいという知恵くらいは、はたらくか」
「そこから遺体を遺棄地点まで移動させていますね。方法は?」
「この現場あたりは農家が多いから」
ピュグマが言った。
「荷車を押してても、そこまで目立たないのだ。夜間なら人通りもすくない」
「宿屋への侵入経路がわからないな。窓を割った形跡はないし」
「客だったのかも。仮にそうなら、宿屋の一階が、アンサブと被害者の遭遇地点ですね。そして、被害者を言いくるめるか、あとを追うなりして地下に行き、そこで襲撃した」
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