Act 1-1:異世界の少女たち

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 湖にかこまれた首都、城塞都市、小さな農村、森や山をつらぬき各都市をむすぶ細い街道、その街道にそって花の咲き乱れる丘陵地帯、川ぞいの湿地帯、遠くに見える雪の積もった山脈地帯……。いまいる広大な森林地帯の裏側に抜けると、臨海都市や荒野もあるという話だ。  むかしに起きた魔術戦争により、自然界のバランスがくずれたという話だから、気候の変化にも影響をのこしているのかもしれない。  目の前に広がる世界を、現実を、現在置かれた状況を、俯瞰する。  幾度となく、世界を呼吸する。  現実感を、肉の内側から満たそうとした。  異世界への召喚、アレはキツかった。  無重力遊泳とジェットコースターが融合したら、あんな感じかもしれない。  とにかく、二度と経験したくない。  電波ものはあぶないということで、スマートフォンやパソコンを回収されたあたりから、イヤな予感はしていたのだ。  惜しみつつ、それなりに高かった電波腕時計をはずしたときのことを思いだす。  それから、ドロリとした緑色の液体──飲むだけで異文化の言語を習得できるものだったようだが、いくらなんでもマズすぎた。  Qは、この飲み心地はバリウムにならぶ、と称していた。  その後ぼくたちは、国王だというオッサンのまえに連れていかれ、あれやこれや話し、いま、ここにいる。  異世界、異世界、異世界だ。  この本部に来るまでの道中、山賊に襲われた。  空をドラゴンが飛んでいった。     
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