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由衣は恋愛小説にハマっていた。
もともと本を読む方じゃない。
でも最近はどんどん進んでいる。
1年で20冊以上は完読していた。
本屋での探し方も小慣れたもの。
好みの1冊を嗅ぎ分けられる。
ストーリーも大切だけど…。
それより求めているのは台詞。
胸がキュンとなるような言葉。
自分の気持ちに重ねてみたり。
アレンジして使いたいと思う。
ただ今はまだ実戦出来ていない。
妄想を膨らませ、文にするだけ。
心の中で想いを寄せる人。
翔太といると言葉が詰まる。
せいぜい言えたとしても…。
「そのスニーカー、いいね!」。
「最近、買ったんだ」。
いいね、じゃなかったかも?
せめて、カッコイイ!
そこにメッセージを込めるべき。
なんて後から後悔するばかり。
「… … … … … … …」。
常に緊張して会話は続かない。
「そうだ、本、読んだりする?」。
「時々、読むよ」。
「実は今、ショート・ストーリー、
書いてるんだ」。
「ネット小説みたいなやつ?」。
「そこまでいかないけど…」。
「今度、試しに読ませてよ」。
「えっ、読んでくれるの?」。
「期待して待ってるよ!」。
あぁ、なんて優しいんだろう。
さっそく由衣は送ることにした。
つたないけれど2人を描いている。
ラヴ・レター代わりの短編小説。
作家はこんな気分なのかな?
誰かに伝えたい、純粋な想い。
それが書き手を突き動かすんだ。
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