零  名は覚えていない

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零  名は覚えていない

 それは、遠い昔の記憶。 「おーい、きのこ!」  幼い頃、とても仲の良い男の子がいた。 「どしたの?」  どんな子だったのか、はっきりと覚えてはいないけど。  「しょうらいは、けっこんしような」  そんな事を言っていた気がする。 「なにあたりまえなこといっているの? ずっといっしょでしょ」  保育園児ながらに。 「たとえ、はなれても」  ある日紡がれた言葉。 「どういうことぅ?」 その意味が分かったのは、それから数日後の事だった。  今はもう、その男の子の名前も覚えていない。
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