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「はい、出来上がり」
「凄いな」
シルヴァンは心から感心しているようだった。
「一枚の布から、こんな立体になるとは。芸術の域だ」
褒められて、日本が褒められたような気がして少し誇らしかった。母が「とにかく覚えろ」と言ったのがなんとなく理解できる。
「あの、どうして窓から……」
私が聞くと、彼は溜息を吐いた。
「俺は部屋から自由に出る事を禁止されている。いや、表立っては禁止はされていないが、一歩出れば、警護と言う名の監視がつく。それでこの部屋に来る訳にはいかないから」
さっきの……広間で少し離れたところにいた金髪の男の姿を思い出した。
「部屋はカルロが調べてくれた」
「カルロ?」
「昨夜もいた、背の高い男だ。今は俺の身代わりで部屋にこもっている」
ああ、浅黒い肌の?
「昨夜の事を、謝らなくてはと思って」
「私も気にしてたの。みんな無事に逃げられた?」
聞くと彼は優しい笑みで微笑んだ。
「お陰様で、みな無事だ」
「よかった」
「お前こそ、何か咎はなかったか?」
「そりゃあもう、マルグテ夫人の雷が」
言うと彼はおかしそうに笑った。
「そりゃ怖そうだ」
「でしょ?」
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