209人が本棚に入れています
本棚に追加
二人でひとしきり笑ってから、私は彼にソファを勧めた、私も向かいのソファに座る、帯があるので、浅く。
「ねえ、どうしてあんな事したの? 恵里佳に恨みが?」
「とんでもない」
シルヴァンは肩を竦めた。
「ただ、ハルルートとの橋渡しをして欲しかっただけだ」
「橋渡し?」
「俺の父は、エタンだ。今、無実の罪で投獄されている、俺は会うことも許されていない、その父に会う為に」
「投獄!? エタンって、前国王の次男の方だよね? 大病で治療中と聞いてたけど……!?」
「それは対外的に流布されている事だ。実際には西の塔の地下に幽閉されている」
ここで。
セレツィア王国の系譜を説明しよう。
前国王たるサンハデス王は一昨年に逝去。
サンハデス王には三人の子供がいた、長男のユルリッシュ、次男のエタン、そしてハルルート王の母になるマルグテ。
末っ子のマルグテ夫人は、アメリカのホテル王と呼ばれる実業家と恋愛結婚し、二男一女を設けていた。
王の死後、暫くはユルリッシュが執務を行なっていたけれど、サンハデス王の一年の喪が明ける頃、謎の死を遂げる。
アメリカ・ニューヨークのスラム街で、変死体で発見された。
同じ頃、エタンも倒れ、隔離病棟に入院したと言う。病名などは公表されていないが面会謝絶だと発表されている。
最初のコメントを投稿しよう!