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そう言う、シルヴァンの目を見てしまった、苦渋に満ちた瞳を。
「そんな。それであなた達の安寧はあるの? 家族は離れ離れになって?」
「別に親が恋しい歳でもない。先日、妹も叔母上が決めた他国の相手に嫁いだ」
この国のことを調べた時に出ていた、ドイツの資産家に嫁いだ事。
「遠くから、セレツィアの平和を願って……」
「せめてお父さんに会おう!」
私は余計なことを言っていた。
「一度も会わずに外国行くなんて辛いよ、私からお願いしてみるから!」
シルヴァンは鼻で嗤う。
「外国人のお前に何が……」
「恵里佳経由でお願いしてみるから! 待ってて!」
「……確かに、ハルルートは恵里佳妃にベタ惚れなようだが。実権は叔母上が握ってる、許可など出る訳……」
「会うだけだよ!」
私の意気込みに、シルヴァンは溜息を吐いた。
「叶わない」
「どうして!?」
「……これは内部での噂だが。伯父上を殺したのは叔母上らしい。父は何か知っているのかも知れない、黙して何も語らない。そんな父に会えるのは極限られた人のみ、しかも言葉を交わすことも赦されていないらしい。そんな状態の父に、俺が逢えると思っているのか?」
「でも!」
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