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恵里佳もなかなか親には会えなくなるだろう、それだって淋しいと言っていた。なのに、周りの都合で引き離されて、もう国にも帰れないかもって思ってるなんて!
「もう国に戻る事がないとか思ってるなら、やってみようよ! 私からお願いするから! だめだったら、また考えよう!」
私が言うと、シルヴァンは小さく頷いた、その目は無理だ、と言っていた。
「明日、恵里佳に会えたら言うから!」
「ありがとう」
小さな声で言った。
「……じゃあ、結果はまた夜、聞きに来ようか」
じゃあ、と言って、シルヴァンは窓へ向かう、部屋に戻るつもりなんだと判る。
バルコニーのはたに、ロープが垂れ下がっているのが見えた。
それに掴まると慣れた様子でするすると降りていく、まるで消防士の訓練を見ているようだ。
二つ下の階には花台があった、その手摺に移る前に私を見て手を振ってくれた、私も振り返す。
ひょいと身軽に飛び移って姿が消える、って、どう言う王子よ?
ロープが揺れて手摺りから外れると、音もなく落ちていく、それが下の階に吸い込まれるのを見届けてから、私は部屋に戻った。
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