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「恵里佳を誘拐してまでしたかったんだよ!? このまま親子が会えなくなるなんて駄目でしょ!? 恵里佳もなかなか両親に会えなくなると思うけど、全く会えなくなるのと訳が違うよ!?」
恵里佳も頷いてくれた。
「ハルルートにお願いしてみる」
「ありがとう!」
***
が。
「なりません」
またしても謁見の間で、マルグテ夫人に見下される。
ハルルートから話が行ってしまったのだろう。
「一体、何処でシルヴァンと」
「昨夜の舞踏会で姿をお見かけして、気になったので、近くにいた方に聞いたんです」
私は誠心誠意の気持ちを込めて言った、嘘とバレないように。
「エタン殿下がお体を壊してから一度もお会いしていないと聞きました。シルヴァン殿下がもうすぐ留学される話も。もうすぐ恵里佳もご両親になかなか会えなくなると言うのと重なってしまって。お願いです、遠目でもいいので、エタン殿下とシルヴァン殿下を会わせてあげてください」
「無理です。医師からも面会謝絶と言われ、私すら会えません」
医師!? どこの医師よ!?
「でも、エタン殿下も心細いかも知れませんし……」
「なりません」
「……判りました、諦めます……」
私はあっさり引き下がった、ここで喧嘩をしても仕方ないと思ったから。
その時、恵里佳が声を上げた。
「あの、渚沙と観光に行きたいのですが」
マルグテ夫人の眉が、ピクリと上がった。
「あなたは忙しいでしょう」
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